有名病院の裏側

医療
  • 大人の胃腸炎、内科・消化器内科での診断と治療

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    大人が吐き気、嘔吐、下痢、腹痛といった胃腸炎の症状で医療機関を受診する場合、まず選択肢となるのが「内科」です。一般的な内科クリニックでは、問診や診察を通じて、ほとんどの感染性胃腸炎の診断と初期治療が可能です。医師はまず、どのような症状がいつから始まったか、食事の内容や周りでの流行状況などを詳しく聞き取ります。そして、お腹を触診して痛みの場所や程度を確認したり、聴診器でお腹の音を聞いたりします。多くのウイルス性胃腸炎の場合、特別な検査をしなくても、これらの臨床所見から診断が下されます。治療の基本は、失われた水分と電解質を補給する「水分補給」と、胃腸を休ませるための「安静」です。症状を和らげるための対症療法として、吐き気止めの薬(制吐剤)や、腸の動きを整える薬(整腸剤)が処方されます。ここで重要なのは、自己判断で強い下痢止め(止痢剤)を使用しないことです。下痢は、体内のウイルスや細菌を体外に排出しようとする体の防御反応でもあるため、無理に止めてしまうと、病原体が腸内に留まり、かえって回復を遅らせる可能性があるからです。一方、症状が非常に激しい、高熱が続く、血便が出ている、海外渡航歴があるといった場合には、より専門的な評価が必要となり、「消化器内科」の受診が推奨されます。消化器内科では、細菌性胃腸炎を疑う場合に便の培養検査を行い、原因菌を特定します。カンピロバクターやサルモネラ菌などが原因であれば、抗生物質の投与が必要となることもあります。また、症状が長引く場合には、大腸カメラ(内視鏡検査)を行い、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患や、虚血性腸炎、大腸がんなどの他の病気ではないかを鑑別診断します。特に、近年増加している炎症性腸疾患は、下痢や腹痛、血便といった症状が胃腸炎と似ているため、専門医による鑑別が非常に重要です。