溶連菌感染症は、発熱や喉の痛みといった症状がよく知られていますが、皮膚にも特徴的な発疹が現れることがあります。この発疹は顔にも及ぶことがあり、他の皮膚疾患との見分け方を知っておくことは、早期発見と適切な対応に繋がります。溶連菌感染症による顔の湿疹は、猩紅熱様発疹の一部として現れることが多く、いくつかの特徴があります。まず、発疹の性状ですが、非常に細かく、粟粒(あわつぶ)のような赤い点状の発疹が集まって、全体として赤く見えることが多いです。触るとザラザラとした感触があることもあります。顔全体が赤くなることもありますが、特に頬が鮮やかに赤くなる「リンゴのような頬」と表現されることがあります。そして、もう一つの特徴的な所見として「口囲蒼白(こういそうはく)」が挙げられます。これは、頬が赤いのに対し、口の周りだけが不自然に白く抜けて見える状態を指します。ただし、これらの特徴は必ずしも全ての溶連菌感染症の患者さんに見られるわけではありませんし、症状の現れ方には個人差があります。また、発疹は通常、発熱や喉の痛みが始まってから一日から二日後くらいに出現し、数日後には自然に消えていきますが、その後、皮膚が薄く剥けてくる(落屑:らくせつ)ことがあります。顔の湿疹以外にも、首や胸、脇の下、股など、皮膚がこすれやすい部分から発疹が広がりやすい傾向があります。舌がイチゴのように赤くブツブツになる「イチゴ舌」も、溶連菌感染症に特徴的な症状の一つです。これらの皮膚症状や口腔内所見は、診断の重要な手がかりとなります。しかし、顔の湿疹はアトピー性皮膚炎や他の感染症など、様々な原因で起こり得るため、これらの特徴だけで自己判断するのは危険です。必ず小児科を受診し、医師の診察と検査(溶連菌迅速検査など)を受けて、正確な診断を得ることが大切です。