脇汗は、多くの人が悩む生理現象の一つです。特に暑い季節や緊張する場面では、服に汗ジミができてしまったり、臭いが気になったりすることもあるでしょう。この厄介な脇汗は、一体どのような原因とメカニズムで発生するのでしょうか。人間の体には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺という二種類の汗腺があります。脇の下には、この両方の汗腺が特に多く分布しています。エクリン汗腺から出る汗は、主に体温調節のために分泌され、成分のほとんどが水分です。運動時や暑い環境下でかく汗の多くは、このエクリン汗によるものです。一方、アポクリン汗腺から出る汗は、水分以外に脂質やタンパク質、アンモニアなどを微量に含んでおり、やや粘り気があります。このアポクリン汗自体は無臭ですが、皮膚の表面にいる常在菌によって分解されると、特有の臭い(ワキガ臭)を発生させることがあります。アポクリン汗腺は、思春期以降に性ホルモンの影響で発達し、精神的な緊張や興奮、ストレスなどによっても発汗が促されます。これを精神性発汗と呼びます。脇汗が多くなる原因としては、まず気温や湿度といった外部環境の影響が挙げられます。暑い時には体温を下げるためにエクリン汗腺からの発汗が活発になります。また、精神的な要因も大きく関わっています。緊張する場面や不安を感じる時、人前に出る時などに、交感神経が刺激されてアポクリン汗腺やエクリン汗腺からの発汗が増加します。さらに、食生活も影響することがあります。香辛料の多い食事や、肉類中心の動物性脂肪が多い食事は、アポクリン汗腺の活動を活発にし、汗の量や臭いを強くする可能性があると言われています。その他、遺伝的な体質や、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能亢進症などの病気が原因で脇汗が多くなることもあります。これらの原因とメカニズムを理解することが、効果的な脇汗対策の第一歩となります。