これまで見てきたように、「ふらつき」という一つの症状には、耳、脳、心臓、首、全身性の疾患、さらには精神的な要因まで、非常に多くの原因が潜んでいます。そのため、患者さん自身が「私のふらつきの原因はこれだ」と特定し、最初から最適な専門科を選ぶのは、非常に難しいのが実情です。だからこそ、ふらつきを感じた時の行動指針として、以下のステップを心に留めておくことが重要です。第一に、パニックにならず、まずは「症状のセルフチェック」を行うことです。①めまいの種類(グルグル回るか、ふわふわするか、立ちくらみか)、②持続時間(数秒か、数分か、ずっと続くか)、③きっかけ(頭を動かした時か、立ち上がった時か、何もないか)、そして最も重要な④伴う症状(頭痛、しびれ、ろれつが回らない、胸痛、耳鳴りなど)を冷静に観察しましょう。このセルフチェックが、後の診察で非常に役立つ情報となります。第二に、危険なサインを見逃さないことです。「突然の激しい頭痛」「手足の麻痺やしびれ」「ろれつが回らない」「胸の激痛」といった神経症状や循環器症状を伴うふらつきは、脳卒中や心筋梗塞といった緊急疾患の可能性があります。この場合は、迷わず直ちに救急車を呼んでください。第三に、緊急性はないものの、どの科に行けばよいか判断に迷う場合です。この場合は、二つの選択肢があります。一つは、この記事で解説した症状のタイプを参考に、最も可能性の高そうな専門科(回転性めまいなら耳鼻咽喉科、立ちくらみなら循環器内科など)をまず受診してみることです。もう一つの、そして多くの場合で最も賢明な選択肢が、「かかりつけ医」や「総合内科・一般内科」を最初の窓口とすることです。総合内科医は、特定の臓器に偏らず、全身を診るプロフェッショナルです。詳細な問診と基本的な診察、検査を通じて、考えられる原因を幅広くスクリーニングし、重篤な病気の可能性を判断してくれます。そして、より専門的な検査や治療が必要だと判断すれば、責任を持って最適な専門科へ紹介してくれます。ふらつきという曖昧な症状だからこそ、自己判断で悩む時間を長引かせるよりも、まずは信頼できる医師に相談し、診断への正しい道筋をつけてもらうことが、不安を解消し、適切な治療へと繋がる最短の道となるのです。
まとめ。ふらつきで迷ったら、総合的な視点での受診を