目の前にギザギザとした光が見える閃輝暗点は、多くの場合、その後に片頭痛の頭痛発作を伴います。しかし、中には閃輝暗点の症状だけが現れて、特徴的な頭痛が起こらない、あるいは非常に軽い頭痛で済んでしまうケースもあります。これを「閃輝暗点のみの片頭痛(片頭痛性アウラで頭痛を伴わないもの)」あるいは「無頭痛性片頭痛」と呼ぶことがあります。このような「頭痛なしの閃輝暗点」は、特に中高年以降に初めて経験する方に比較的多く見られると言われています。片頭痛のメカニズム自体は頭痛を伴う場合と同様で、脳の視覚野における皮質拡延性抑制(CSD)が関与していると考えられています。頭痛がないからといって、必ずしも心配ないわけではありません。まず、本当に片頭痛性のアウラなのか、それとも他の重大な疾患(例えば、一過性脳虚血発作(TIA)や脳梗塞、脳腫瘍、網膜の病気など)の症状ではないかを慎重に鑑別する必要があります。特に、これまで片頭痛の経験がない方が初めて閃輝暗点のような症状を経験した場合や、症状が典型的でない場合、持続時間が異常に長い場合、あるいは高齢者の場合は、自己判断せずに神経内科や眼科を受診し、精密な検査を受けることが強く推奨されます。医師は、症状の詳しい聞き取りや神経学的診察、必要に応じてMRIなどの画像検査や眼科的検査を行い、原因を特定します。もし、他の疾患の可能性が否定され、閃輝暗点のみの片頭痛と診断された場合でも、その誘因となる生活習慣(ストレス、睡眠不足、特定の飲食物など)を避けるといった対策は、頭痛を伴う片頭痛と同様に重要です。また、頻繁に起こるようであれば、予防的な治療が検討されることもあります。頭痛がないからといって安心せず、視覚に異常な症状が現れたら、まずは専門医に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
閃輝暗点頭痛なしの場合も要注意?