エアコンの効いた涼しい部屋は夏の暑さを忘れさせてくれますが、その一方で「冷え」が原因で体調を崩し、時には発熱に至ることもあります。なぜ体が冷えると発熱することがあるのでしょうか。そのメカニズムを理解しておきましょう。私たちの体には、外部の温度変化に関わらず体温を一定に保とうとするホメオスタシス(生体恒常性)という機能が備わっています。この体温調節を主に担っているのが自律神経です。しかし、エアコンによる急激な温度変化や、長時間冷気にさらされることによって体が冷えすぎると、この自律神経のバランスが乱れてしまいます。特に、冷えは交感神経を刺激し、血管を収縮させます。血管が収縮すると血行が悪くなり、体の隅々まで酸素や栄養素が行き渡りにくくなります。また、白血球などの免疫細胞の働きも低下するため、体の抵抗力が弱まってしまいます。体温が一度下がると免疫力は約三十パーセント低下するとも言われています。このように免疫力が低下した状態では、普段なら問題にならないようなウイルスや細菌にも感染しやすくなり、風邪や気管支炎などを発症し、その結果として発熱という症状が現れるのです。また、体が冷えること自体がストレスとなり、自律神経の乱れをさらに助長することもあります。自律神経が乱れると、体温調節だけでなく、消化機能やホルモンバランスなど、体の様々な機能に影響が及び、全身の不調に繋がります。さらに、エアコンの冷気は空気を乾燥させやすく、喉や鼻の粘膜を乾燥させます。粘膜が乾燥すると、バリア機能が低下し、ウイルスや細菌が侵入しやすくなるため、これも感染症による発熱のリスクを高める要因となります。このように、エアコンによる「冷え」は、自律神経の乱れ、免疫力の低下、粘膜の乾燥などを引き起こし、複合的に作用することで、発熱という症状にまで至る可能性があるのです。