大人の溶連菌感染症がしばしば見逃され、結果として手の皮がむけるといった回復期の症状に驚かされる原因は、その症状の非典型性にある。小児における溶連菌感染症は、高熱、喉の強い痛み、イチゴ舌、そして全身の猩紅熱様の発疹という明確なサインを伴うことが多い。保護者はこれらの症状を鋭敏に察知し、早期に小児科を受診して診断を受けることができる。これに対して大人の場合、免疫機能が発達しているため、同じ菌に感染しても症状がマイルドに留まる傾向がある。微熱あるいは発熱なしの喉の痛み、倦怠感といった症状は、いわゆる普通の風邪と区別がつかないことが多い。そのため、多くの大人は市販の風邪薬を飲んで数日過ごせば治癒したと錯覚し、そのまま医療機関を受診せずに放置してしまう。これが、後の皮膚症状を不可解にさせる最大の要因である。感染症としての診断が下されないまま経過するため、抗菌薬による適切な治療が行われない。溶連菌は自然治癒する場合もあるが、適切な抗菌薬治療を行わないと、咽頭内に菌が残り続け、合併症のリスクを高めるだけでなく、周囲への感染源となり続ける。また、皮膚症状が現れる頃には本人も感染していたことを忘れているため、皮膚科を受診しても、過去の喉の病歴を医師に伝え損ねるケースが後を絶たない。その結果、医師も手湿疹や接触皮膚炎として診断を下し、ステロイド外用薬などを処方することがある。しかし、これは原因疾患である溶連菌の感染後の生理的反応に対する対症療法に過ぎず、医学的な文脈を正確に捉えられていない可能性がある。大人の溶連菌感染を見逃さないためには、喉の痛みがあった数週間後に、手の皮がむけたり、皮膚が乾燥してきたりしたという一連の経緯を、自分自身で記録しておくことが重要である。もし、原因不明の喉の不調を感じた後、手の皮がむけ始めたのであれば、それは単なる手荒れではなく、過去の感染症の遺産である可能性を考慮に入れるべきである。大人は忙しい日常の中で体調不良を無視しがちだが、溶連菌は再発や合併症のリスクがあるため、たとえ軽症であっても身体のサインを軽視してはならない。自身の身体に起きている変化を、独立した事象として見るのではなく、時系列に沿った一連のプロセスとして理解することで、医療機関を受診した際にも正確な情報を伝え、適切な診断とケアを受けることができるようになる。この高い意識を持つことこそが、大人だからこそ必要な健康管理の要諦といえる。
なぜ大人の溶連菌感染は見逃されやすいのか