胃腸炎はよくある病気のため、「このくらいの症状で病院に行っていいのだろうか?」と受診をためらってしまうこともあるかもしれません。確かに、症状が軽く、十分に水分補給ができていれば、自宅療養で自然に回復することも多いです。しかし、中には医療機関での治療が必要なケースや、危険な病気のサインが隠れている場合もあります。ここでは、年齢を問わず、胃腸炎の症状で医療機関を受診すべき目安について解説します。まず、最も重要な判断基準は「水分が摂れているかどうか」です。吐き気が強くて全く水分を受け付けない、あるいは飲んでもすぐに吐いてしまう状態が続く場合は、脱水症のリスクが非常に高くなります。特に、高齢者や子ども、糖尿病などの持病がある方は重症化しやすいため、早めの受診が必要です。次に、症状の強さや種類にも注意しましょう。「立っていられないほどの激しい腹痛が続く」「便に血が混じっている(血便)」「嘔吐物に血やコーヒーかすのようなものが混じっている(吐血・下血)」といった症状は、単なる胃腸炎ではない、より重篤な消化器疾患(腸閉塞、虚血性腸炎、消化管出血など)の可能性を示唆します。また、「38.5度以上の高熱が続く」「意識がもうろうとしている、受け答えがおかしい」「呼吸が速く、苦しそう」といった全身症状は、体が危険な状態にあるサインであり、緊急の対応が求められます。さらに、症状の持続期間も一つの目安となります。通常、ウイルス性胃腸炎の症状のピークは1〜3日程度です。適切な水分補給を心がけても、嘔吐や下痢が一向に改善しない、あるいは一度良くなったのに再び悪化するといった場合は、別の原因を考える必要があります。これらのサインが見られた場合は、自己判断で様子を見るのは危険です。日中であれば内科や小児科、夜間や休日であれば救急外来を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。