バーベキューや会食の後、あるいは特定の食品を食べてから数時間~数日後に、複数の人が同時に嘔吐や下痢、腹痛といった症状を発症した場合、それは「食中毒」の可能性が高いと考えられます。食中毒は、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O-157など)、黄色ブドウ球菌といった細菌や、ノロウイルスなどのウイルスが付着した食品を摂取することで起こります。原因となる病原体によって潜伏期間や症状は異なりますが、一般的な胃腸炎と区別がつきにくいことも少なくありません。食中毒を疑った場合に受診すべき診療科は、基本的には胃腸炎と同様に、大人は「内科」または「消化器内科」、子どもは「小児科」です。医療機関を受診する際には、医師に伝えるべき重要な情報があります。それは、「いつ、どこで、誰と、何を食べたか」という詳細な食事の内容です。また、自分だけでなく、一緒に食事をした他の人にも同様の症状が出ていないかどうかの情報も、食中毒の診断において非常に有力な手がかりとなります。医師はこれらの情報と症状から食中毒を疑い、原因菌を特定するために「便培養検査」を行います。特に、激しい腹痛や血便を伴う場合は、O-157などの腸管出血性大腸菌感染症の可能性を考えなければなりません。この菌は、ベロ毒素という強力な毒素を産生し、重症化すると「溶血性尿毒症症候群(HUS)」という、急性腎不全や貧血、血小板減少を引き起こす致死的な合併症を招くことがあります。そのため、安易な自己判断による下痢止めの使用は絶対に避けるべきです。治療は、脱水を防ぐための水分補給が基本となりますが、原因菌が特定されれば、それに応じた抗生物質が投与されることもあります。また、食中毒は食品衛生法に基づき、診断した医師から保健所への届け出が義務付けられています。これは、さらなる感染拡大を防ぐための重要な措置です。疑わしい症状がある場合は、感染拡大防止のためにも、速やかに医療機関を受診することが求められます。
食中毒を疑う場合、何科に行けばよいのか